マーケティングの基礎からキャリアの作り方まで、ビジネスパーソン必携の1冊

 初投稿。おすすめの本を紹介します。

 

 今回私がおすすめする本は、株式会社刀代表取締役CEO森岡毅著「USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)を劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門」です。著者である森岡毅氏は、株式会社刀の代表取締役CEOを務めている戦略家・マーケターであり、TBS/MBS系列のTV番組「日曜日の初耳学」のTV出演でも話題になった人物です。マーケティングノウハウを形式知化した「森岡メソッド」を開発し、経営危機にあったUSJに導入してわずか数年で劇的に経営再建したことで知られています。彼がUSJで手がけたものは「ハロウィン・ホラーナイト」や「ハリウッド・ドリーム・ザ・ライド ~バックドロップ~」そして「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター™」など、いずれも大ヒットしています。関西出身の私は学生の頃よくUSJに遊びに行きましたが、ハロウィン・ホラーナイトが始まった年ごろから、それまで閑散としていたパーク内に波打つほどの人が押し寄せるようになっていったことを未だ鮮明に覚えています。

 

 手がけるものほぼ全てをヒットさせていく森岡氏が書かれたこの本は、『・個人も会社もビジネスで成功するためのカギである「マーケティング思考」を伝えること・私が体得してきた「キャリア・アップの秘訣」を伝えること』(以上同書より引用)を目的に、森岡氏の高校生の娘さんにも分かるように書かれた本です。「高校生にも分かる」の言葉通り、本書は実務者向けではなく、初心者向けの本、つまりマーケティングの入門書になります。

 

 この本は以下の9章から成り立っています。1.USJの成功の秘訣はマーケティングにあり 2.日本のほとんどの企業はマーケティングができていない 3.マーケティングの本質とは何か? 4.「戦略を学ぼう」 5.マーケティングフレームワークを学ぼう 6.マーケティングが日本を救う! 7.私はどうやってマーケターになったのか? 8.マーケターに向いている人、いない人 9.キャリアはどうやって作るのか? 1、2章はUSJ、そして日本企業のマーケティングについての現状を解説する導入部門、3章から5章はマーケティングの基本から用語解説、6章から9章はキャリア戦略についてが主に述べられています。

 森岡氏は、USJマーケティングを重視する企業になって、劇的に変わったと述べます。そして、「マーケティング思考」は、全ての仕事の成功確率をグンとあげるものであるため、全てのビジネスパーソンが身に着けるべき能力だと説きます。1,2章の導入部分では、マーケティングの果たす役割をUSJでの具体例を通して描きます。マーケターの仕事とは、どこで戦うのかを見極め、そこに全社の努力を集中させ、会社を勝たせること、つまり消費者理解の専門家であると説きます。そして、USJが変えたのは「消費者視点」という価値観と仕組みであり、それはつまり「消費者の方を向いて消費者のために働く」ということだと説明します。しかし、日本のほとんどの企業はマーケティングができておらず、技術志向に陥っていると論じ、最たる例として携帯電話を取り上げます。分厚い取扱説明書付きの日本製携帯電話が取扱説明書なしのiPhoneに取って代わられたことは私たちの記憶にも新しいのではないでしょうか。また、マーケティングアメリカで発達した学問であること、日本で発達してこなかった理由に規制、終身雇用、技術志向の3つのバリアがあること、と解説します。

 3章から5章のマーケティングの基本から用語の解説では、マーケターとは、企業のマーケティング部所属の人ではなく、マーケティングができる人かどうか、そしてマーケティングとは売る、よりも売れるようにする仕事、売れる仕組みを作ることだ、と再度説明します。そしてマーケターになるために最も大切なスキルは戦略的思考能力を身に着けることであり、家訓となる考え方は選択と集中である、と説きます。そしてUSJが仕掛けた「ハロウィン・イベント」を例に、マーケティングフレームワークを解説していきます。

 6章以降では、森岡氏の経験などから、日本におけるマーケティングの必要性、キャリア論が述べられていきます。マーケティングという学問と日本人との親和性、そして今の日本企業の弱みから日本を救うのはマーケティングであると論じます。そして、森岡氏のマーケターとしてのキャリアがどのように作られていったのかを示します。また、周囲のマーケターの特徴などからマーケターに向いている人の4つの属性を示します。さらにマーケターとしてだけでなく、キャリアそのものはどのように作っていくのか、を示し、最後にはマーケターになりたい人、そしてすべてのビジネスパーソンに使えるアクションプランを提示し、本書は締められています。

 以上のように、こちらの本は森岡氏のUSJでの経験を軸に、マーケティングとは何か、からキャリアの作り方までを非常にわかりやすく解説された本になります。ただの参考書ではなく、森岡氏の実体験や思いもふんだんに記されているため、読み物としての満足度も高い1冊だと私は考えます。是非、お手に取っていただければ幸いです。